As-IsとTo-Beとは?医療DX・システム開発で失敗しないための現状分析と理想設計
As-Isは現在の業務やシステムが実際にどう動いているかを整理すること、To-Beは改善後に目指す業務の姿を設計することです。医療DXでは、その間にあるGapを見極め、現場に無理なく定着する改善順序を決めることが重要です。
Target Reader / 対象読者
医療DX、受付改善、オンライン診療、既存システム連携、システム開発の進め方を整理したい医療機関・薬局・医療法人
結論
As-Isとは、現在の業務やシステムが実際にどのように動いているかを整理することです。To-Beとは、改善後に目指す業務やシステムの姿を設計することです。
医療DXやシステム開発で重要なのは、As-IsとTo-Beを書くだけではありません。その間にあるGap、つまり理想を実現するために何を変える必要があるかを具体化することです。
最新システムを入れることが目的になると、現場の運用とずれて使われない仕組みになりがちです。現場に根付くDXは、As-Isを丁寧に理解し、Gapを切り分け、無理なく移行できるTo-Beを設計するところから始まります。
As-Is、Gap、To-Beの違い
As-Is / To-Beは、業務改善やシステム開発でよく使われる考え方です。医療現場では、受付、問診、会計、薬局連携、配送、本部管理など、複数の人とシステムが関わるため、この整理が特に重要になります。
| 考え方 | 意味 | 医療DXで見ること |
|---|---|---|
| As-Is | 現在の業務やシステムが実際にどう動いているか | 誰が、何を、どの順番で、どこに時間がかかっているか |
| Gap | 現状と理想の間にある改善すべき差 | 二重入力、待ち時間、転記、確認漏れ、患者さんの迷い |
| To-Be | 改善後に目指す業務やシステムの姿 | 現場に無理なく定着し、患者さんとスタッフの負担が軽くなる流れ |
As-Isとは、現場で本当に起きていることを理解すること
As-Is分析では、マニュアル上の流れだけでなく、実際の現場で起きている作業を見ます。誰が、何を、どの順番で、どのくらい時間をかけて、どこで困っているかを整理します。
たとえば外来受付では、患者来院、保険証確認、紙の問診票記入、電子カルテへの転記、診察、会計、処方箋発行という流れがあります。一見すると自然な流れでも、実際には二重入力、受付待ち、問診内容の転記ミス、患者さんの呼び出しなどの負担が隠れていることがあります。
- 紙と電子カルテの二重入力がある
- 混雑時に受付や会計の待ち時間が長くなる
- 問診内容の転記や確認に時間がかかる
- スタッフが何度も患者さんを呼びに行く
- 問い合わせ内容が記録されず改善につながらない
To-Beとは、現場に無理なく入る理想像を描くこと
To-Beは、改善後の理想的な業務やシステムの姿です。ただし、ここで重要なのは、最新技術を全部入れることではありません。現場に無理なく導入でき、運用が続く理想像を描くことです。
同じ受付業務でも、QRコード受付、スマートフォンやタブレットでの問診、電子カルテへの連携、自動精算、薬局への処方箋送信などを組み合わせることで、紙、転記、待ち時間、確認負荷を減らせる可能性があります。
| 改善前の状態 | 改善後に目指す状態 |
|---|---|
| 紙の問診票を記入し、スタッフが転記する | 事前問診やタブレット問診を活用し、必要項目を連携する |
| 名前で呼び出し、聞こえない場合に再度呼ぶ | 番号表示や案内画面で、患者さんが自分で確認できる |
| 電話で予約や持ち物を確認する | Web予約、FAQ、来院前案内で事前に確認できる |
| 会計待ちや精算状況が分かりにくい | 会計準備状況や支払い方法を分かりやすく案内する |
重要なのはGapを設計すること
システム開発では、As-IsとTo-Beを並べるだけでは不十分です。現状から理想へ移るために、何を変えるべきか、何は残すべきか、どこから小さく始めるかを決める必要があります。
Gapを整理すると、いきなり大規模な入れ替えをしなくても、受付導線、表示システム、Web予約、Excel集計、既存システム連携など、優先順位を付けて改善しやすくなります。
| As-Is | Gap | To-Be |
|---|---|---|
| 紙問診 | 電子問診・入力項目の整理 | 必要な情報を電子カルテや確認画面へ連携 |
| 名前で呼び出す | 番号札・案内表示の設計 | 待合表示で呼び出し状況を確認 |
| 手作業会計 | 会計ステータスと精算導線の整理 | 待ち時間と窓口確認を減らす |
| 電話予約 | Web予約・FAQ・来院前案内 | 24時間予約受付と問い合わせ削減 |
| 月次集計がExcel職人に依存 | CSV形式・集計ルールの標準化 | 経営判断に使える数字を早く確認 |
実例1: 会計表示システムで考えるAs-Is / To-Be
院内の会計表示を例にすると、As-Isではスタッフが患者さんの名前を呼び、聞こえなければ再度呼び出し、窓口問い合わせが発生し、業務が中断されることがあります。
To-Beでは、番号札を発券し、会計準備ができた番号をディスプレイに表示します。患者さんは画面を見て移動でき、スタッフは呼び出しに追われにくくなります。
| 観点 | As-Is | To-Be |
|---|---|---|
| 呼び出し | スタッフが名前で呼ぶ | 番号やステータスを画面に表示する |
| 患者さんの確認 | 聞き逃しや不安で窓口に確認する | 待合表示を見て自分で確認できる |
| スタッフ負担 | 呼び出し、再呼び出し、問い合わせで中断する | 会計準備と例外対応に集中しやすくなる |
| 期待できる変化 | 待合がざわつきやすい | 待合室が落ち着き、呼び間違いも減らしやすい |
実例2: オンライン診療で考えるAs-Is / To-Be
オンライン診療でも、As-Is / To-Beの整理は重要です。単にビデオ通話を入れるだけでは、予約、保険証確認、問診、決済、薬局連携、処方箋送信の負担が残ることがあります。
To-Beでは、Web予約、保険証アップロード、事前問診、ビデオ診療、希望薬局への処方箋送信、決済や配送の導線までを一連の体験として設計します。患者体験だけでなく、医療従事者の確認作業も軽くすることが目的です。
| 工程 | As-Is | To-Be |
|---|---|---|
| 予約 | 電話で日程調整する | Web予約で候補日時を確認する |
| 保険証確認 | メール添付や電話確認に頼る | アップロードと確認ステータスを整理する |
| 問診 | 紙や口頭で確認する | 事前問診で必要項目を確認する |
| 処方箋 | 郵送や電話連絡が残る | 希望薬局への送信や確認フローを整える |
As-Isを飛ばすとDXが失敗しやすい理由
DXでありがちな失敗は、最初からTo-Beだけを考えることです。AIを入れる、オンライン化する、電子化するという目的だけが先行すると、現場の業務フローとのズレが生まれます。
その結果、現場で使われない、手作業が増える、結局元の運用に戻るということが起こります。システムそのものが悪いのではなく、現状理解と移行設計が足りないことが原因になる場合があります。
- 現場で実際に起きている例外対応を見落とす
- 人が確認すべき業務まで無理に自動化してしまう
- 既存システムとの接続点を決めないまま導入する
- スタッフ教育や運用変更の負担を見積もらない
- 効果測定に使う数字を決めず、改善が続かない
NEURONLABが大切にしている考え方
NEURONLABでは、新しいシステムを導入すること自体を目的にはしていません。まず、現在どのような業務が行われているか、どこで時間がかかっているか、何が現場の負担になっているかを整理します。
そのうえで、既存運用を活かしながら改善できるTo-Beを設計します。すべてを作り替えるDXではなく、必要な部分だけを接続・改善する現実的なDXを重視しています。
As-Isを正しく理解し、Gapを整理したうえでTo-Beを設計すること。それが、現場に根付くシステム開発の第一歩です。
開発前に確認したいチェックリスト
As-Is / To-Beを整理するときは、次の観点から確認すると、現場で使われる改善案に近づきます。
- 現場では誰が、いつ、どの情報を確認しているか
- 紙、電話、Excel、手入力がどこに残っているか
- 患者さんが迷いやすい導線はどこか
- 既存システムを残す範囲と連携する範囲はどこか
- 人が確認すべき判断と、システムで軽くできる作業を分けているか
- 小さくPoCできる範囲と、本番実装が必要な範囲を分けているか
FAQ
As-IsとTo-Beとは何ですか。
As-Isは現在の業務やシステムが実際にどう動いているかを整理すること、To-Beは改善後に目指す業務やシステムの姿を設計することです。
医療DXでAs-Is分析が重要な理由は何ですか。
医療現場では受付、診療、会計、薬局連携、配送などが複雑につながっているため、現状を見ずにシステムを入れると、手作業や確認負荷が増えることがあるためです。
Gap分析では何を整理しますか。
現状と理想の間にある差を整理します。二重入力、待ち時間、転記、確認漏れ、患者導線、既存システム連携など、改善に必要な具体的な変更点を洗い出します。
To-Beは最新システムを入れることですか。
いいえ。To-Beは現場に無理なく定着する理想像を設計することです。最新技術の導入より、既存運用を活かしながら必要な部分を改善することが重要です。
Consultation
個別相談が必要な論点は、現場の状況に合わせて整理できます。
現場ごとの導入相談、既存システムを活かした設計相談、配送やラストワンマイルを含む相談まで、 実運用を前提に整理します。
